それでも朝はやって来る
眼鏡を戻してあげると、すかさずかけ直した。



「ささささ…佐伯さん。おおお…オムライス、美味しいで……す…ね……



最後の方は緊張してるのか、殆んど聞き取れなかった。

眼鏡をかけ直したはずなのに、斜めに耳にかかっているところがとても可愛くて。



「桜小路さん、眼鏡曲がってるよ」



そっと頬に手をかけて眼鏡を直してあげると、頭から火が出そうなぐらい真っ赤になってうつ向いてしまった。




下を向いている桜小路の首の後ろに、黒いアザのようなものが見えた。



「あれ?襟のところにゴミがついてるかも…」


と言って、朝子は桜小路の襟元に手を伸ばした。


バシッと音がしたと思ったら、朝子の右手がじんじんと痛んだ。



朝子は桜小路に叩かれたと気づくまでに、少し時間がかかってしまった。


桜小路は真っ青な顔をしながら、ブラウスの襟元をつかんで、首を隠してしまっていた。



「あっ……、ごめん」



素直に謝ったが、桜小路はそのまま何も言わずに固まったままだった。



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