それでも朝はやって来る
*****


もう、何店舗回ったかわからない。

どこにいっても、悠里には朝子の姿が確認できなかった。


「満月は明日だってーのに!

こんなことなら、首に縄でもつけて置くんだった!!」


夜空は少し肌寒かったが、走り回っている悠里には暑いくらいだった。

顔から滴り落ちる汗を、何度もシャツの袖で拭った。



まだまだ駅前にはカラオケの店舗がたくさんある。



ポケットから携帯を取り出して、真楯に電話を掛けた。


『はい、真楯です』


電話口には、やけに冷静な真楯の声が聞こえた。


「ッたく!どこのカラオケだよ。どこにもいねぇぞ!!」


『バッカス駅前店』


「なっ!?お前、知ってんなら早く言えよなぁ…」


『いや、僕も今さっきわかったんです。やみくもに探すより…』


「切るぞ」


『悠里様!?』


ごちゃごちゃ言われる前に、悠里は電話を切った。

店名さえ聞ければ、もう用がない。


足早にそこへ向かった。

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