それでも朝はやって来る
神剣は親指で流れ出た血を拭いた。

何事もなかったように、朝子の胸を鷲掴みにした。

痛さで、目尻に涙が浮か。


「やめ…て…」


弱々しく抵抗をした。


「お前、悠里に惚れたな。唇が華よりも甘い味がするぞ」


頬を真っ赤に染めて、朝子は俯く。



どうして、この手の人達は他人の気持ちにズガズカと入り込んで来るんだろう。



クルリと簡単に身体をひっくり返されて、神剣に背を預ける形になってしまった。

背筋に感じる大きな体が朝子を威圧してくる。


「お前を食べてやろうと思ったが…」


首筋を厚い舌で舐められ、耳朶を肉厚な唇で挟まれた。

嫌悪感で首が引きちぎれんばかりに、右を向いた。


「………お前の蜜がどれ程甘いのか試して見てからでも、遅くはあるまい」


低くお腹に響くような声で、耳元で囁かれて体がビクッと振れた。


「あいつの事など、考えてられない様にしてやろう」


頭を掴まれて強制的に神剣のほうを向かされた。

真っ白な眼が薄気味悪く光る。



怖い…

悠里やさくらちゃんと同じ目なのに…



震える朝子の反応を楽しむかのように、執拗に耳を蹂躙してきた。



悠里……!!






「ね。おっさんいい加減にしない?」




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