それでも朝はやって来る
「まぁ、よい。目的は果たした…」


神剣は傍にあったカーテンを少しばかり開くと、真っ白な光が眩しく差し込んだ。


「夜は明けたな」


眩しそうに目を細め、勢いよく窓を開けた。

ビュゥと窓から風が入り込む。



その瞳は、前の力強い黒に戻っていた。

神剣が朝子に笑いかける。


「腹の印は保険だ。それが消える頃また会うであろう」


その言葉を聞き、朝子はゾッとした。

二度と会いたくないし、触れてほしくもない。





その時、バタンと入り口のドアが開いたかと思うと、悠里と真楯が勢いよく飛び出してきた。



「朝子!!」



ソファの上の乱れた服装の朝子を見るなり、悠里は必死の形相で彼女を抱き締めた。


「橘…貴様!!

朝子に何をした!?」


怒りで歯止めが聞かないのか、朝子を抱く腕にグッと力が込められ痛いぐらいだった。


眼光はみるみるうちに真っ赤に染まり、全身の毛が逆立っていた。


「八重樫の…久しぶりだな。随分と貧相な出で立ちになったなぁ」

「……いったい誰の性でこうなったと思ってんだよ!!」

「貴様の自業自得であろう。違うか?」


何も言えず、悠里は奥歯を噛み締めるしかなかった。


「 残念だな、満月の夜は過ぎてしまったな。

だが、まだお前は死なない。大人しく俺の条件を飲め、そうすれば直ぐ呪いを解いてやろう」


.
< 136 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop