それでも朝はやって来る
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大きな門から入って、車でもう五分は走っただろうか。

楓の木が両脇に植えられている道を真っ直ぐ進んでいく。

楓の木は真っ赤に染まり、時折ひらひらと葉っぱが風にのって舞い降りてきた。


真楯は無言で、車を運転していた。


朝子の隣には、腕を組ながらじっと夕日を眺めている悠里がいた。


車内には沈黙が続く。


少し走ったところに大きなお屋敷が見えてきた。

その白亜の屋敷の大きな白い扉の玄関まで来ると、ピッタリとその前に車を寄せた。


車が停まっても降りる気配のない悠里。


変に思って悠里の顔をじっと眺めていると、さっとドアが開いた。


ドアを開けたのは真楯で、降りようとしている悠里に一礼していた。



ななな…


何、これ?



口を開けたまま驚いていると、朝子側のドアも勝手に開いた。


「お待ちしておりました、佐伯様」


ドアの外には白髪の執事のような格好をした人が立っていた。


朝子は差し出された手に手を重ねると、スムーズに車の中から引っ張り出してくれた。


一礼をした後、悠里の後について屋敷の中に入るよう促された。


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