それでも朝はやって来る
顔にかかった髪の毛が妙にくすぐったくて…

目も開けずに払い除けようと、右手を顔の近くまで持っていくと、親切にも誰か優しい手が髪を払ってくれた。


「んっ…」


その手はそのまま顔を撫で、唇へと移動した。


お腹が空いたので少し舐めてみると、飴玉のように甘い味がした。



甘い……



うっとりと口を開けて、指を奥へと促す。

もっと…と、筋ばった指を唇で挟み舌で転がしてみる。

暖かい舌ですっぽりと包み、甘い味を楽しんだ。


「ん…美味し…」


と、突然、デコピンされた。


「全部食うなよー

ったく…お前、どんだけ腹減ってんだよ」


うっすらと目を開けると、目の前には悠里の顔があった。


「さっさと着替えろ」


悠里はベットから立ち上がって、クローゼットを開けた。


「お袋はいないが、親父はいるからな。ちっとまともな服着とかねーとな」


テキパキとクローゼットから、服や小物を出していく。


「……」


藤咲先生のなんて着たくない…

ぶうたれた顔で悠里を見ていると


「なんだ。お前好みのダッサイ服なんな置いてねーよ。騙されたと思って着てみろよ」

「…………藤咲先生のなんて着たくない」

「 は?」


.
< 143 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop