それでも朝はやって来る
「たった一回の過ちで、こんな言われ方されなきゃいけねーのかよ!」


スーツに合わせて整えられた髪を、悠里は両手でぐちゃぐちゃに掻いた。


「あの人のいう通りなんでもやって来たのに…

クソッ…」


奥歯を音がしそうなほど、噛み締めていた。



…………泣いて…る…?




「…………悠…里?」


肩に手をかけようと、そっと伸ばすと勢いよくはね除けられた。


「俺にさわるな!」


叩かれた手がじんじんと痛む。

舌打ちをされ、眉間に皺を寄せて睨まれた。


この数日で、悠里と心が少し通いあった気がしたのに…


朝子を一人の人として扱ってくれてた気がしたのに…


今の一瞬で、それがなかったことになってしまったような気がした。


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