それでも朝はやって来る
窓を全部閉めたはずなのに、頬を撫でる冷たい空気で朝子は目を冷ました。



いつの間にか寝てしまったのか、月の影も見当たらないほどだった。


辛うじて目を凝らせば、家具の位置が特定できる程度だ。



甘い華のような香りが、朝子の鼻をかすめる。


頭がぼぉっとしてきて、瞼が重くなってきた。


目の前がクラクラして、少し気持ち悪い感じがした。




急に、ベットの右側が沈むと布団をゆっくりとめくりあげられた。


肌寒く全身が震えたが、両手が重く思うように動かなかった。


顔にかかった髪をヒヤリとした手が払い除けてくれた。


誰かがそこにいるとは分かっていたが、頭が重く見ることができなかった。


甘い匂いは部屋中に充満して、朝子の自由を奪う。




その手が悠里だと分かった時には、朝子の唇は悠里のものによって塞がれていた。



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