それでも朝はやって来る
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あーもう面倒臭いなー

朝子は体育館裏にいた。


「ねぇ、櫂(かい)様のことといい、新しく来た真楯先生といい。おかしいわよねぇ、何で貴方なんかに…」


至近距離で話しかけてくるから、バラの香りが鼻につく。

同じクラスの西園寺 朱美(さいおんじ あけみ)とその取り巻きに、朝子は昼休み呼び出されていた。

小さな顔に大きな目玉が二つ、くるくる巻かれた髪の毛のなかにあった。
華奢な手足はすらりと長く、透けるように白かった。
よくモデルみたいだねとか言われて、喜んでる姿を見かけた。


それがなんで、あたしにいちゃもんつけてるのかわからないけど…

て言うか二人も連れてきて、一人で話に来れないの?とか思ってみたり…


「生徒会長の東雲 櫂(しののめ かい)様があなたと仲良くしてるのもよくわからないし」


左にいるショートカットの取りまきが言うと、今度は右にいるこけし頭が言った。


「あなたの家に昨日真楯先生が入っていくのを見たって言う人がいるのよ」


西園寺が冷ややかな目で朝子を見ながら、顔を近づけてきた。


「貧乏なのを逆手に取って、優しくしてもらおうなんておかしくないかしら?」


親指の爪を噛みながら、上目遣いで見てくる。


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