それでも朝はやって来る
1限目は真楯の英語の授業だった。


「あー、悪いんだけど教科書見せてもらえねぇか?」


悠里の声が右の方から聞こえてきた。

もう訳が分からずなかなか答えないでいると、悠里不機嫌そうに言った。


「一番右後ろの席で、他に誰も見せてもらえねぇんだけど」



遠くの方から西園寺が、すかさずやって来た。


「あの!八重樫君、よかったら私のっよかったら使って?」


朝子には見せたことないような可愛らしい笑顔で言った。

悠里の顔が一瞬…
ほんの一瞬、面倒臭いというような顔をした。
瞬きした次の瞬間にはニコリと笑っていた。


「わりぃな…でも、お前のが…ええと…」

「朱美よ」

「朱美んのが、なくなっちまうだろ。とりあえず、こいつに借りるから大丈夫だ。だよな?」


顎で合図された。
うんと言うしかなかった。

西園寺はこけしとショートカットの元に戻っていった。


「キャー、聞いた?朱美って呼び捨てにされちゃったぁ。なんか俺様キャラっぽくて素敵!」


いや、俺様キャラじゃなくて俺様なんだよ、西園寺。
気づけよ、それぐらい…

ま、これで教科書かしても西園寺には何も言われなそうだし…



あれっ…?

もしかして、それがわかってて…


「なんだよ、早く見せろよ。8ページだってよ」


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