それでも朝はやって来る
「えっと…君…、佐伯朝子(さえきあさこ)さん?」

大きな瞳が優しく微笑んで、朝子の名前を口にした。

風が吹くと、少し長めの髪が揺れた。


「お父さんのことで、ちょっと話があるんだけど…」


父…

と言われて、体がピクリと反応した。


父の話って、いったいなんだろう…


もう随分会っていない…

あのどうしようもない父の…

また、人様に迷惑をかけたんじゃないか、もしくはよくない金融業社からまたお金を借りたんじゃないか。


あーっ、ヤメヤメ!
考えるとイライラするから…


男とも女ともつかないその人が、朝子の手をとって車へと案内する。



…んっ…?!

ちょっと待て…


《知らないの車には、乗らないこと》


そんなの小学生でも分かってることだよね。


後部座席の横で立ち止まる。


「すっ、すいません!いきなりなんなんですか?父のことって…」


その時、後部座席のドアがバン!と開いた。

驚いたすきに、車の中へひっぱられる。


「…誘拐っ…!だっ…誰か助けて!!


…誰っ…か…もごっ…」


騒がないように、後ろに乗っていた人物に口をふさがれた。




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