それでも朝はやって来る
「……てわけだから、消えろよ。生徒会長の…」

「東雲 櫂だ」

「しののめ?」


櫂の名前を聞いた途端、悠里の顔色が変わった。


「朝子…黙ってたらわからないだろ?にーちゃんにちゃんと説明しろ」


この機会を逃したら、朝子はきっとこの状況櫂には、説明しないだろう。


悠里は朝子にこう耳打ちした。


(俺の背中に手を回せよ。拒んだら、全額金返してもらうからな)


返事をするよりも早く悠里が朝子の唇を塞いでいた。

いつもするような深い深いキス。

唇が離れる僅かな瞬間に、朝子にしか聞こえない声で言った。


「早く手ぇ回せ」


命令されて無我夢中で悠里の背中に手を回した。

櫂がいるのも忘れて、悠里がくれる甘美なキスに酔いしれてしまった。

足元がフラフラして立っていられなくなって、悠里に回した手に力を込めた。


キスを終え、唇を離すと悠里が朝子を支えるようにグッと抱きしめた。


「見ての通り、こいつ俺んだから」

「…えっ!?」

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