それでも朝はやって来る

「ねぇ、あなたたち職員室はどちらかしら？」


ふいに背後から声をかけられて、二人は同時に振り向いた。


高校には似つかわしくない妖艶な出で立ちの女性が立っていた。

体に沿うようにぴったりなブラウスが豊満な胸のラインを強調していた。
優雅な曲線を描いて、魅力的なヒップを連想させる黒のタイトスカートからすらりと長い足が伸びていた。

近づいてくると、ふわりと大人の香水の香りがした。


「ここをまっすぐいって、突き当たりを左に入った初めの教室が職員室です…けど…」


学校にそぐわないその女性を警戒しながら、カナは答えていた。

疑うような目で見られているのを察してか、綺麗に塗られた唇の端を上げて女はこう言った。


「フフフ…、まだまだ子供ね」


あからさまにバカにされて二人はビックリした。
その人は、朝子を上から下まで眺めてフンと鼻を鳴らした。

「明日からこの学校に赴任することになった保健師の藤咲 かえで(ふじさき かかえで)よ。よろしくね、佐伯 朝子さん」




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