それでも朝はやって来る
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放課後にもなると、教室は美人保健師の話で持ちきりだった。


「超美人だね、保健室の先生。あー、もう俺、怪我してなくても保健室に行きたいわ~」

「折角だから、今日行こうぜ」


男子は口々にこんなことを言っていた。


「もう何なのよ!田中くんも、矢上くんもあんな先生のどこがいいのよ!」


西園寺はクラスの男子相手に金切り声をあげていた。
美人の先生が来て、いままでみんなにちやほやされていた自分が蔑ろにされてるという危機感からか、みんなのご機嫌とりに必死だ。
今話しかけてる二人は、いつもは西園寺の親衛隊を名乗るほど西園寺に夢中なのに、今は彼女に目もくれない。


「やっぱ、大人の魅力っていうのかな~同級生にはない色香が漂っているんだよなぁ」

「そうそう!通りすぎた後とか、超いい匂いするし」


全くもって相手にされていなくて明らかにイライラしてる西園寺の眉間には深くシワがよって、なんとも言えない顔つきに変わっていた。


アハッ…西園寺さん顔が不細工になってる…


いつもなんかしら朝子に言い掛かりをつけてくる彼女だったが、この日はそれどころではないみたいだ。


「私のが若いし可愛いでしょ!!」


田中の襟をつかんで自分の方に向けてまだ話を続けるようだ。


「21歳のおばさんなのよ!もう、昨日まで私が一番かわいいっつ言ってたじゃない!二人とも可笑しいわよ!」


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