それでも朝はやって来る
校門のところまでいくと、櫂兄が待っていた。


壁に寄り掛かりながら、何か本を読んでいた。

そんな姿も様になる。
トレードマークの黒縁眼鏡を中指で自然に持ち上げた。


エヘヘ…格好良い


「んー、朝子。もう帰れるのか?」


まさかとは思うけど、悠里、櫂兄に例の力使ってないよね。

櫂兄と帰ることなんて、最近なかったし。


「櫂兄、なんで今日は一緒に帰ることになったの?」


櫂の動きがピタリと止まった。


「なんでだっけ?」


あれ?やっぱり、悠里のヤツ力使ったのかな。


「あ、そだそだ。朝子と同じクラスの転校生…なんて名前だっけ?」


首を捻りながら、名前を思い出そうとしてた。


「兎に角!無駄に格好イイそいつが、昼休みに俺んとこ来て、朝子さんが最近変なヤツに付け回されてるみたいで、自分が送れないから頼みますって言ってきたんだ」


悠里…


「そいつと付き合ってるのか!?」


心配そうに櫂が顔を覗きこんできた。

首を横にふると、櫂はホッとしていた。


櫂兄のこと好きになればよかったな…

そうしたら、こんな辛くて怖い思いしなくてすんだのに…

悠里なんかじゃなかったら…




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