それでも朝はやって来る
「痛ッ…」

「大丈夫ですか?」


伸ばした腕に痛みが走った。

あの棗のなかにいたあいつに掴まれたところだ。

真楯がひんやりとした手で、塞ぎ損ねた手をふわりと掴んだ。


「キズ…できちゃいましたね」


揉み合った時にできた小さな擦り傷が、朝子の細い手にたくさんできていた。


何を思ったか、真楯は徐に朝子の指を唇に近づけペロリと舐めた。


「せせせ…先生!!」


とっさに手を引っ込めようとしたが、真楯がそれを許してはくれなかった。


「傷…治りましたよ」


少し首を傾けながら、真楯は笑った。


「えっ!?」


真楯が舐めたところだけ傷が嘘のように消えていた。


「先生の力なの?」


そう問いかけると、真楯は首を横に振ってこう言った。


「あなた様の力ですよ」

「でも、あたし傷なんて治せな…」

「黄金率の体だけではただの人と変わりません」


握っていた手に力を込めた。


「僕たちがあなたの体液を取り込むことで、いろんな力に変えられるんですよ。だからみんな貴方が…貴方から得られる力が欲しいんですよ」



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