それでも朝はやって来る
「舌を出してください」


「ええっ!?」


細くて長い指が朝子の頬に添えられた。

少し頬を撫でながら、真楯の親指が朝子の下唇を捕らえた。

急かされるように、少し強めに唇をおされると下の歯が風にあたって冷たかった。



「早く…」



真楯の細められた瞳が否と言わせてくれなかった。

親指に触れないように注意しながら、舌を少し出した。

手が緊張してうまく力が入らない。


「もっとちゃんと出して…」


言うが同時に少し上を向かされた。


キツめに出した舌の先端を真楯の薄紅色の舌が唾液を舐めとるように滑っていく。


しっかり絡まないそれがやけにくすぐったくて…

もどかしくて…

むず痒いような…


確実に唾液は絡めとられていった。


恥ずかしくて顔から火が出そうなくらい赤くなっている朝子をよそに真楯は、朝子の擦り傷ができた腕を取ると、手のひらを自分に向けて傷を舐め始めた。

するとみるみるうちに、傷が治っていく。

朝子の舌を舐めては傷を舐め、それを数回繰り返した。

やがて、手に残っていた小さな擦り傷は、ほとんどなくなってしまったのだ。


「他には、痛むところはないですか?」


くすぐったさと羞恥心で死んでしまいそうだった。


ふるふると首を横に振ると…



「ダメですよ。嘘をついては…」



と言い、真楯は半ば強引に朝子の右腕を引っ張ると肩にかけてあった毛布が床に静かに落ちた。




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