それでも朝はやって来る
危うく取り出そうとしていた麦茶の瓶を落としそうになった。


キッチンの電気はつけていなかった為、冷蔵庫の明かりだけが浮かび上がる。

自分の体を冷蔵庫と悠里の間に挟まれて、朝子は心臓の高鳴りを止めることができなかった。



ちちちち………

近い…っ



振り返れば、悠里がいる。

しかも、悠里は下はスウェットで上は何も着ていなかった。

乾ききっていない髪に黒いタオルを首からかけて、何故か朝子越しに冷蔵庫を覗いている。


お風呂上がりで蒸気した体が妙に温かくて…

後ろには目なんかついてないのに、背中全体で悠里を感じてしまう。

緊張して体がカチコチに固まってしまって、一歩も動けなかった…


悠里も微動だにしない。


後ろを振り向く事もできず、少しの時間なのにとても長く感じられた。


悠里…
こんな時間にお風呂に入ってるなんて…

避けられてる…のかな…


うう…なんか言ってくれないと…

どうしよ…


散々迷ったあげくどうしようかと決めかねていると、先に口火を切ったのは悠里だった。



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