クズカノ

しばらくは気まずい沈黙が流れた。

しかし、僕はそれを気まずいとすら感じる余裕もなかった。

先に口を開いたのは彼女の方だった。


「あなたが、はじめてのひと」


「わたしでごめんね」


「ばいばい」


まるで誰かに言わされているような、感情の無い言葉。

彼女が背を向けて立ち去ろうとした時、僕の中で何かが弾けた。
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