君を探して
『忘れちゃえよ』

その言葉にドキっとした。


<でも、そんなの聞いても全然楽しくないと思うよ?>

<いいから! じゃあ、まず、あいつと出会ったとこから話して>


“オレ”は強引だ。
私は仕方なしに素直に答えた。

<出会ったのは去年の春。こんなこと、言わなくてもきっとオレ様は知ってるんだろうけど。部活で同じトランペット担当だったから仲良くなったの>

<第一印象は?>

<同い年とは思えないくらい、落ち着いていて、大人だった。幼なじみの陽人とか、その友達のヤマタロと違って、一緒にいるとすごく穏やかな気持ちでいられた。頭もよくて、頼りがいがあって>

<最初から好きだったんだ?>

<うん。多分ね>


そうだ。

私は最初から、慎に惹かれていたんだ。

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