君を探して
最初のデートは、動物園。

その次は、映画。

でも、どこかに行かなくてもいい。
毎日学校で会えるのが一番幸せだった。

毎日誰よりも先に部室に顔を出して、

2人で準備をして、

2人で練習をして、

終わった後も二人で居残り練習をして、

2人で片付けをして、

2人で部室の戸締まりをして……


思い出すのは、いつも二人で笑っている風景ばかりだった。


<ケンカしたことは?>

<あるよ。でも、そのたびに、慎が歩み寄ってくれた>

ケンカの理由がなんであれ、先に謝るのはいつも慎の方だった。

慎は怒るとき、いつも私に逃げ道を作ってくれて、決して追い詰めるようなことはしなかった。

<私がふてくされてると、慎はいつも私に『もういいから笑って』って言ってくれたの。それなのに、私はいつも意地を張って>

困って私の顔をのぞき込む慎。

『ケンカはおしまいにしよう』って、私の頭をなでてくれた。

優しく抱き寄せてくれた。



……忘れてた。



慎はいつも、私に笑いかけてくれていた。

いつも、いつも。


疲れてしまうくらい、

私を大事にしてくれていた──

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