君を探して
「練習、しようか……」

沈黙を破ったのは慎。
トランペットを構えると、大きな音でオクターブを鳴らす。

でも、私はそんな気分にはなれなかった。

せっかくタケちゃんがいない2人きりの時間なんだから、この気まずい雰囲気をどうにかしたい。

「ねぇ、慎」

私がそう言うと、慎はマウスピースから軽く唇を離した。

「何? 練習しないの?」

「うん……。あのね、一度、ちゃんと話をしない?」

慎はそれでも前を向いたまま、こちらを見ようとしなかった。

「今夜は塾があるから、別の日でもいい?」

「……いいよ」

「じゃあ、また声かける」

ぶっきらぼうにそう言うと、慎はすぐに練習を再開した。



(私たち、もうダメなのかな?)


私の心の中で、そんな言葉が初めて形になった瞬間だった。

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