君を探して
「チョコ……」

そういえば、そうだね。私、チョコの前で泣いたこと、なかったね……。


その時、私の携帯が鳴った。

カバンから携帯を取り出すと、そこには

 新着メール 1件

と書いてある。


チョコが私の携帯をのぞき込んだ。

「深月、これって……」

私とチョコは顔を見合わせた。

まさか……。

そして、急いでメールを開く。


間違いない。

それは、“オレ”からのメールだった。

こんな時間にメールをくれた事なんて、一度もなかったのに。


そこには、こう書かれていた。


<泣くな、バカ!>


私は携帯から目を離し、慌てて周囲を見回した。


教室の中も、廊下も、何も変わりのない日常の風景だ。

だけど、確かにこの中に“オレ”がいるんだ。

失いたくない人が、こんなに近くにいるんだ。


チョコがぼそっとつぶやいた。

「愛されてるじゃん、深月」

その言葉を聞いて、私はチョコの胸でますます激しく泣いてしまった。

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