君を探して
慎の本音を聞いたのは、1ヶ月くらい前。

場所は放課後の教室。

それは本当にささいな口ゲンカがきっかけだった。

ケンカの原因が何だったかなんて、覚えていない。
覚えていないっていうことは、そんなに大したことではなかったんだと思う。

その言い合いの流れの中で、

「もう、どうして分かってくれないの?」

こんな、私のありきたりな言葉が、慎の癇に障ったのだ。

慎は普段はとても穏やかだ。
典型的な優等生タイプ。

同級生なのに、すごく大人で、そういうところが陽人やヤマタロと比べてとても安心できた。

そんな慎が、このとき初めて怒鳴ったんだ。

「そんなに言うんなら、相馬や山野上に頼れよ!」

慎の目は、今まで見たことがないくらい、冷たかった。

「俺は何なんだよ! 何が仲良し4人組だ! 俺よりあいつらのほうが気が合うんだろ? だったらあいつらのとこに行けよ! もう、うんざりだ!!」


……驚いた。

慎が声を荒げる姿にも、

その内容にも。


目の前の慎のことが、急に怖くなった。




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