君を探して
「でも言えなかったんだ。深月にとって俺は“すごく物分りがよくて、やさしい彼氏”だったから」

「……」

「俺は深月のことが好きだからね。深月がそう望むんなら、そういう彼氏になってやろうと思って、かなり無理してたのかも」

「……」

「深月、あいつらと一緒にいるとき、すごく表情が変わって楽しそうで……羨ましかったよ。でも、そんなつまらないヤキモチをやいてるなんて、かっこ悪くて、知られたくなかったし」

「……」

「そういうのに、もう、疲れちゃったのかもな」

慎は悲しそうな顔で笑った。


そして、そのまま私に背を向けると、教室を出て行った。


私は慎に甘えすぎていたの?

慎をずっと苦しめていたの?


誰もいなくなった教室に、私はずっと立ち尽くしていた。


自分が涙を流していることにも気づかずに──
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