君を探して
「……んぱい、せーんぱぁーい!」
過去にタイムスリップしていた私を呼び戻してくれたのは、後輩のタケちゃんだった。
タケちゃん、いつの間に来ていたんだろう。
……っていうか、今日の私はボーッとしすぎだ。
「よーし、じゃぁ3人そろったとこで、曲を通してみましょうかっ!」
そんなタケちゃんに、私と慎は口をそろえて「お前が言うな!」って突っ込みを入れて。
そして「うわっ、ハモった!」って面白がるタケちゃんにつられて笑う。
気まずかった空気が、一瞬で和んだ。
タケちゃんはひとつ年下の男の子。
最近ちょっと部活をサボり気味だけど、いざ演奏となると、とてもいい音を出せる期待株だ。
人懐っこい笑顔で無邪気に笑うタケちゃんの存在に、私と慎はどれだけ助けられていることか。
私はタケちゃんが来てくれて、ホッとしていた。
うん……。
きっと、慎も、同じ気持ちだよね……。