君を探して
「ねえ、今日は陽人はいないの?」

「ああ、下で待ってるよ」

そう言ってオレは、自分の机の中に手を入れて財布を取り出した。

「これ、取りに来ただけだから」

「そうかー、じゃあ一緒に帰ろうよ! お腹すいたから、何か食べて帰らない?」

深月は笑顔で先に教室を出て行く。

オレは黙ってそれに続いた。


先を歩く深月の背中を見ながら、考える。

……さっきの話を全部聞いたと言えばいいだけだ。

そして、もう強がるなと言って抱き寄せてやればいいんだ。

「なぁ、深月」
オレがそう言うと、
「なに?」
と深月が後ろを振り返る。


「……いや、なんでもない」

「変なヤツ!」

……簡単なことじゃないか。

なのに、どうしてそんな簡単なことができない?

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