君を探して
だけど、そんなオレの願いは届かず、深月と慎の関係が修復することはなかった。


オレは、放課後、いつもグラウンドから2人の様子を見ていた。

グラウンドを走りながら、あいつの吹くトランペットを聞いていた。

あいつ、歌は下手なくせに、トランペットは上手なんだよな……。


あのケンカの一件があるまでは、オレ達がグラウンドを走っていると、時々トランペットの音が消えることがあった。

吹奏楽部が練習している校舎のほうに目を向けると、そこには楽器を膝の上に置いて練習を中断し、楽しく笑っている深月と慎の姿があった。

しばしば、2人のトランペットの音が重なって、心地よいメロディーを奏でることもあった。

オレや陽人は、グラウンドから、そんな深月たちの様子を見守っていた。


……だけど。

あの日を境に、2人のトランペットの音は、消えることも重なることもなくなってしまった。

オレは音楽のことはよく分からない。

だけど、深月のトランペットの音はもの悲しくて、まるで泣いているように聞こえた。
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