君を探して
深月は、その日に起きたことを話し始めた。

とても淡々と。
まるで人ごとのように。

そして最後に、
<もう、好きじゃなかったのかもね>
なんて軽く言いやがった。

……あの日、1人で突っ立ったまま肩をふるわせて泣いていた深月の姿がよみがえる。


そんなわけないだろ。
お前は慎のことが大好きだったじゃないか。


彼氏ができたって真っ赤な顔してオレ達に報告しただろ?

あいつの好みだからって髪の毛を伸ばし始めただろ?

チョコに化粧をしてもらった顔を嬉しそうに鏡で見て、「ちょっと見せてくるね!」って慎の教室に走って行っただろ?

毎日、楽しそうに2人でトランペット吹いてただろ?


お前はそれを全部『仕方ない』って割り切ってしまえるほど、器用な奴じゃないはずだ。

そうやって自分の心の中に何重にも鍵をかけて、辛い気持ちと一緒に封印しようとしてるのか?


……そんなこと、させてたまるか!
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