君を探して
「あぁー」

アイツか、慎の浮気相手。

「電話番号は陸上部の友達に聞きました。それで、今、近くの駅にいるんです。先輩にお話ししたいことがあって……。会ってもらえませんか?」

「ごめん、悪いけど」

「私、先輩が来てくれるまで待ちますから!」

……勘弁してくれ。

時計を見ると、もう11時を過ぎようとしていた。

終電まであと少し。

ここでごねられて終電が出てしまっても面倒だ。

「じゃあ、終電の時間までっていうことで、いい?」

「はい!」


別にエリナの話を聞きたい訳じゃない。

頭を冷やすために外の空気を吸いに出たかっただけだ。


電話を切ると、オレはジャケットを羽織った。

靴を履き、玄関のドアを開けると、火照ったオレの頬を冷たい空気が刺した。

< 231 / 308 >

この作品をシェア

pagetop