君を探して
ホームには誰もいない。

この周辺は完全な住宅街だ。
こんな時間帯、電車を降りる人はいてもこれから乗ろうなんて人はいない。

オレはホームの自販機でホットコーヒーを2つ買った。

「これ、どうぞ」
そう言って、少し後ろを小走りについてきたエリナに1つ渡す。

エリナは「ありがとうございますっ!」と言ってそれを受け取ると、自分の頬に軽くあてた。
そして、軽く首をかしげて、オレを見ながら「あったかーい」と言う。

……あぁ、コイツ、かわいいな。
自分をかわいく見せる方法をよく知っている。

オレは思わず感心してしまった。

深月ならこんなときどうするだろう?

そうだな。後先考えずにほっぺたに缶を思いっきり押しつけて「熱いー!」って大騒ぎするんだ。
バカだからなぁ、アイツ。

そんなことを考えながら、オレはベンチに座ってコーヒーを飲んだ。

エリナは長い間黙っていたが、急にオレの前に立ち、オレの目を見ながら
「私、先輩が好きなんです」
と言った。

目は涙ぐんでいる。
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