君を探して
試合はちょうど陽人がバッターボックスに入るところで、陽人は打席に入る前に何度も大きな素振りをしたあと、雄叫びを上げた。

「このこと……陽人も知ってるんだよね?」
「知ってるよ-」

……そうなんだ。

陽人がバッターボックスに入り、バットを構える。

「陽人は、深月をストーカーから守るんだ! って言って、夕方近くの駅まで迎えに行ったりしてたからね。それをやめさせたかったんだ。だから“オレ”のことが分かった日に、ストーカーなんかじゃないから安心していいよっていうことだけ、話したの」

「えっ?」

「気づかなかった? 最近、深月の周りを、怪しげなジョギング男がうろついてたでしょ?」

そう言われて見れば、陽人が平日の夜にジョギングする姿なんて、今まで見かけた事がなかった。

初めて見たのは……そう。“オレ”からのメールが届いた日だった。

そして昨日、陽人は
『ジョギングは、もういいんだ』って言ってた……。


ピッチャーが1球目を投げた。

まっすぐに陽人の方へ向かってくるボール。

陽人は、初球からいきなりフルスイングした。
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