君を探して
次の日の朝、学校の正門前では確かに教師による風紀検査が行われていた。

別に違反をしているわけじゃないけど、こういうのってあまり気持ちのいいものじゃなくて、先生たちの前を小声で「おはようございます」と言いながら下を向いて足早に通過する。


その時。

「高橋、おはよー」

このやる気のない声は……
顔を上げると、3人並んだ教師のなかに、滝田先生の姿を見つけた。

「はは、朝からやる気ないね、先生」

「まぁなー」

少しは否定してよ……。
隣の体育教師が、滝田先生を横目でにらんでいる。

「じゃあね、先生」

「あぁ、今日は部室に顔出すから」

「了解」

高校教師としてはどう考えても評価が低い滝田先生だけど、吹奏楽部員の私たちにとっては尊敬すべき存在で、その音楽の才能には目を見張るものがある。

高校生の私でも、先生の演奏はすごい! 音楽の才能がある!って分かるくらいだ。

先生はフルート、サックス、クラリネット、ホルン、トランペット、トロンボーンなどの管楽器はもちろん、打楽器全般もセミプロ並みにこなす。

部員の前でタクトを振る姿は、教壇に立つ先生とはまったく違って、自信に満ちあふれ活き活きとしている。

実は、音楽の道に進むという夢を今でも捨てきれず、教師を続けながら、プロのオーケストラの人員募集があるとその試験を受けているっていう話も聞いたことがあるし。

まぁ……それって、教師としてはどうなんだ? って感じだけど。

< 25 / 308 >

この作品をシェア

pagetop