君を探して
その時、教室の後ろのドアが開いた。

中に入ってきたのは、隣のクラスの女の子。

中学の時に一年だけ同じクラスになったことがある、知佳ちゃんだ。

確か、ヤマタロとは小学校からの付き合いで、仲がよかったはず……。

「恭太郎~っ!」

知佳ちゃんは、ヤマタロの姿を見つけるとそう呼んで、こちらへ歩いてきた。

「ありがとー、これ、面白かったよ」

そう言いながら、手に持っていた洋画のDVDをヤマタロに渡す。

それを受け取ったヤマタロも、
「コレ、よかっただろー? 知佳は絶対好きだと思ったよ」
と応えている。



(……恭太郎?)



それはもちろんヤマタロの名前なんだけど。

だけど知佳ちゃん、前からヤマタロのこと名前で呼んでたっけ……?

「深月、久しぶりぃ。懐かしいね」

知佳ちゃんは私のことを覚えていて、私たちのことを見て
「相変わらず、仲いいんだね-」
と言った。

私は、口角をきゅっとあげて頷いた。

でも、完全に作り笑いだ。

その唇が、少し震えた。


知佳ちゃんはすぐにヤマタロの方に向き直って、話を続ける。

「ねえ、今度続編も貸してよ」

「いや、続編はまだ見てないから」

「えー、早く買ってよー!」

楽しそうなヤマタロと知佳ちゃん。



……なんか、イヤだ。


私は、ヤマタロの好きな映画なんて、知らない。


……“恭太郎”なんて、呼んだことない。

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