君を探して
「あー、そう言えば、昨日見たよ!」

知佳ちゃんが、ニヤっと笑った。

「昨日、駅で後輩のオンナと一緒にいたでしょー。誰だったっけ……あの……かわいくて有名な子……」

……なに?

「あの時間だったら終電でしょ? まさかあの子、家に連れ込んでたんじゃないでしょうね?」

「バーカ、そんなんじゃねーよ」

「でも、仲良さそうだったじゃん! ホームで缶コーヒー買ってあげてるとこなんて、遠目から見てもいい感じだったよー。美男美女でお似合いだよね」

「……なに盗み見してんだよ」

知佳ちゃんの追求にも、ヤマタロは顔色一つ変えない。

「そう! 思い出した、沢崎エリナだ!」

え?
エリナ?

ヤマタロは、
「ほら、もういいから帰れ」
と立ち上がると、知佳ちゃんの肩を掴んで向きを180℃回転させ、ドアの方へどんっと押し出した。

知佳ちゃんはまだ話したかったみたいで、私に「じゃ、またね-」と言いながら不満そうに教室を出て行く。

ヤマタロは、知佳ちゃんの姿がドアの向こうに消えるのを見届けたあと、また同じように横向きに座って足を組んだ。


そして、知佳ちゃんから受け取ったDVDを私に差し出した。

「深月も見る?」

私は首を横に振って答えた。

「ううん、いらない」

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