君を探して
「エリナのこと、聞きたい?」

「別に聞きたくない!」

私は顔を背けた。

「深月、まさかオレとエリナが何かあったとか思ってんの?」

「そんなこと思ってないよ!」

思ってないけど……でも、2人で一緒にいたのは事実じゃん。

さっきから、頭の中で、知佳ちゃんの『いい感じだったよー。美男美女でお似合いだよね』っていう言葉が何度も何度もリピートされていた。

何度も、何度も。


「……やっぱり誤解されたくないから、ちゃんと話しとくわ」

そう言ったヤマタロは、きっと今、少しだけ困っていて、だだをこねた子供をなだめるような表情をしてるんだ。

「昨日、深月とのメールの後、いきなり電話がかかってきて、呼び出されたんだよ」

そう言って、話し始めるヤマタロ。

「終電の時間が近かったし、それまでっていう約束で駅に行って。……だからもちろん、知佳が言ったような、家に上げたりなんてことはしてないし……」


だけど私は上の空。

そんなの、どうでもいいよ。


ヤマタロは、私が何を不安に思っているか全部お見通しで、

その上で、私を安心させてくれようとしていて。


そんなヤマタロに無性に腹が立った。


…………なんで私だけ、こんなに余裕ないの。


ヤマタロの言葉が、何も耳に入ってこない……。




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