君を探して
教室に入ろうとしたとき、隣の教室の前に慎の姿を見つけた。

慎は見覚えのある女の子と楽しそうに話している。

「あれ、誰?」

チョコが小声で私に聞く。

「部活の後輩だよ。最近仲がいいみたい」

……あの子は、沢崎エリナ。

小柄で、華奢で、かわいくて。吹奏楽部のアイドル的存在だ。
特に男子部員うけが抜群にいい。

「ふぅーん、なんかいけ好かない感じだなぁ」

チョコはエリナをじっと見ている。いや……見ているっていうか、睨んでる?

エリナはクスクスと口に手を当てて笑い、慎の腕を軽く叩いていて……。

「うげっ! 男の前でクネクネしちゃって、気持ち悪っ! 絶対友達少ないでしょ、あの子」

チョコはああいうタイプが一番嫌い。

チョコだってかわいいし、見た目は「お人形さん」みたいなんだけど、実はそこら辺の男よりずーっと芯が通っている。

ちなみに陽人はそのギャップにメロメロなんだけどね。

「いるんだよねぇ、ああいう女」

2人は私たちに気づくことなく、楽しそうに話を続けた。

あーあ。慎のあんな笑顔、私は当分見ていないなぁ……。

「だいだい、もうすぐチャイムが鳴るって言うのに、上級生の教室まで来て話すかね? もしかして、慎くん狙われてるんじゃない?」

「らしいねぇ……」

「らしいって! それでいいのー!?」
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