君を探して

幸あれ!

なんでだろう。

さっきまで、あんなに苦しかったのに。

まだヤマタロのことを考えると胸が締め付けられるけど、全然イヤな感覚ではない。

「ヤマタロが好き」

そう思うだけでドキドキするけど、

それはまるで、ずっと閉じ込められていた私の気持ちが、やっと自由になれたって大騒ぎしているみたいだった。




なんだか久しぶりに軽い足取りでマンションへ帰る途中、陽人に出くわした。

陽人は、


「今日はジョギングじゃないからな、心配するな」

と、手に持っていた女物の財布を見せた。

それ、うちの親の財布じゃん……。

まあ、別に今更驚かないけど。


「コンビニ?」

「そう。今夜はおまえの家で鍋やるんだって。それで、ビールの買い出し頼まれたとこ」

「ふーん」

明日は土曜だし、またみんなでお酒を飲んで騒ぐ気なんだろう。


……今日は早く1人になりたかったんだけどな。


「でも、この前すき焼きやったばかりじゃん」

「知るか、親に文句言えよ…じゃあまたあとでな」

そう言って、早足で駅の近くにあるコンビニへ向かおうとする。

「待って! 私も行く」

私は慌てて陽人の背中を追いかけた。
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