君を探して
「ばっ、バカ!?」

「ああ、大バカだ。お前、そんな当たり前のことでなーに悩んでるんだ?」

「……え?」

「“オレ”っていうのは、お前が勝手に作り上げた存在なんだろ? だったらいくら考えたって、そんな存在しない奴の顔が分かるわけないんじゃねーの?」

私は黙って陽人の話に耳を傾けた。

「それに、お前が実際にメールをしてたのは、そんな得体の知れない“オレ”なんかじゃなくて、ヤマタロだったわけだろ?」


……あ!

その時私は、真っ暗闇の先に小さな明かりを見つけた。


「チョコも言ってたじゃないか、あのメールは“まんまヤマタロだ”って」


うん。

そうだね。

そうだった……。


「お前を支えていたのも、お前が想っていたのも、ヤマタロだったってことだよ」


うん……。

うん……。


「だったらいいだろ。ヤマタロの中に“オレ”がいるって思えば、それで」


それはまるで、いくらやっても外れなかった知恵の輪が、いとも簡単に外れてしまった瞬間だった。



「女って言うのは、なんでこんな簡単なことを小難しく考えるのかねー」


そう言った陽人が、なんだかとても利口に見えた。

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