君を探して
「おっ! 深月、ちょっと見てみろ-!」

陽人が急に、マンションの前の自動販売機に向かって走り出した。

「お前の好きなホットココアが入ってるぞ!」

「えっ、どこどこ!!」

私も駆け出す。


マンションの前の自販機には、毎年冬の間だけホットココアが並べられる。

「ホントだーっ!」

私はそのホットココアが大好きで、冬になると毎日のように買っていたのだ。

……今年もまた、そんな季節がやってきたんだね。


「幸先いいな! よーし、ここは俺がひとつ奢ってやろう」

そう言って、うちの親の財布からお金を出す陽人。


……奢り?

……細かいことは、まあいいか。


ホットココアは音を立てて、取り出し口へ落ちてきた。


「深月!」

陽人が、ココアを私に投げて渡す。

受け取ったそのココアは、陽人の優しさがいっぱい詰まっていて、泣きたくなるくらい温かかった。


「あったかーい!」

私は思いっきり、ホットココアを自分のほっぺたに押しつけた。

そして、次の瞬間。

「あっつーいっ!!」


……ホットココアは、温まりすぎていた。

「ははは、バカな奴-」

陽人がそんな私を見て笑った。

私も、それにつられて笑う。


私たちは、なんだかおかしくて、楽しくて、家に帰り着くまでずっとずっと笑っていた。

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