君を探して
その晩、鍋を囲んでの宴会は夜遅くまで続いた。

リビングでは、陽人がパパとこたつに入り、大の字になって大きないびきをかいていた。

その横では、かなりお酒の入った陽人の両親とママが、さっきからかみ合わない会話を延々続けている。

(この様子だったら、まだまだ続くな……)

お腹いっぱいになってすっかり暇になってしまった私は、酔っぱらいたちの目を盗んでその場を抜け出し、簡単にシャワーを浴びて部屋に戻った。

部屋のドアを開けた途端、部屋の冷たい空気が温まりきっていなかった私の体を包む。

私はリモコンで部屋の暖房をいれ、ベッドに横になった。

時計を見ると、22時ちょうど。

私の体内時計は、もう、この時間を覚えてしまっているのかも知れない。


私は、手を伸ばして机の上の携帯をとった。

久しぶりだな、この感覚。

私の手は自然に、新規メール作成画面を呼び出していた。

その送信先は……“オレ”。


……だけど。

私はそこで、手を止めた。


メール作成をキャンセルして、待ち受け画面に戻ると、着信履歴の一覧から「ヤマタロ」を選んだ。

そして、通話ボタンを押す。


少しの間が開いたあと、携帯のスピーカーから、電話の発信音が聞こえてきた。

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