君を探して
いつだったかな。
陽人と3人で帰ったときのことを、ヤマタロは覚えていたんだね。

あの時、お店の前で陽人が立ち止まって「寄って行くか?」って言ったのに、その時の私はまだ慎に失恋した傷を引きずっていて、お店に入るのが辛くて。

ヤマタロはきっと、そんな私の気持ちを察して、お店の前を素通りしてくれたんだね……。


「そんなことないよ! もう、平気だから」

それは本当の気持ちだった。

昨日の夜は確かに気が重かったけど……。

でも、さっき久しぶりにお店の前に立ったときには、もうあのときの胸を締め付けられるような痛みは感じなかった。

その時私の心にあったのは、いろんな思い出を懐かしく思う気持ちと、目の前にいるヤマタロのことだけで。

「そう? 店の前でグズグズしてたから、あーまだ無理なんだなーと思って迎えに出たんだけど」

「あぁ……だって、それは……」

「それは?」

ヤマタロが、私をじっと見つめる。



……言うなら、今だ!



「それは……ヤマタロを見てたからだよ」



心臓が張り裂けそう。

だけど、言わなきゃ。

ゴクって生唾を飲み込んで、大きく息を吸い込んで、私は言った。



「ヤマタロが好きだから、ヤマタロのことを見てたんだよ」



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