君を探して
「その前に、今日だな。これからどうする? 動物園でも行くかー?」

「えー。ベタじゃん、動物園って」

……ん?

なんだろう、この会話。

……どこかで聞いたことがあるような気がする。


「楽しくなるぞ、これから」

「うん……そうだね……?」

気のせいかな?
それまで優しさいっぱいだったヤマタロが、ニヤリと笑った気がした。

「クリスマスの次は、大晦日だなー」

「ん?」

……大晦日?

「深月、ちゃんと大晦日の夜は空けとけよ」

……なんだろう、このイヤな予感は。


「覚えてない? オレ、言ったじゃん。『今後の参考にさせてもらう』って」


……

…………

………………


私の脳裏に、嫌な記憶がよみがえってきた。

それは、私が“オレ”に話した慎との思い出話。


 つきあい始めたのは……このお店。

 最初のデートは……動物園。 

 クリスマスには……指輪のプレゼント。

 年が変わる瞬間は…………


ヤマタロの言葉の『意味』を理解した私は、思わず立ち上がってしまった。


「なっ、なっ、なに馬鹿なこと言ってんのっ!!」

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