君を探して
「深月、顔赤くなりすぎ」

「そりゃそうでしょ! すました顔でなに言ってるのよ、もう!」

「イヤなの?」

「イヤとかじゃなくてっ! まだ、さっき『好き』って言ったばかりじゃん! そんな話、早すぎるよ!」

火照った顔をさまそうと手でパタパタ仰いでみるけれど、効果なんてなかった。

もう……恥ずかしくて死にそう!


ヤマタロは座ったまま、そんな私の反応を見て楽しんでいる。

「深月、かわいー」


やっぱりヤマタロは……意地悪だ!!


「もう帰る!!」


私はそう言うと、隣の椅子においていたカバンを手に取った。

本気で帰りたかったわけではないけど、とにかくその場にいるのが恥ずかしくて苦しくて、とりあえずトイレに逃げ込んでしまおう……って。


そう思った瞬間。


ヤマタロが立ち上がって私の手を掴み、その手を力強く自分の方へ引き寄せた。

私は、あっという間にヤマタロに抱きすくめられてしまった。



手に持っていた私のカバンが、音を立てて足元に落ちた。

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