君を探して
どのくらいそうしていたんだろう。

ふと、ヤマタロの腕の力が緩んだ。


見上げると、すぐ目の前にヤマタロの顔がある。

こんなに間近でヤマタロの顔を見るのは初めてだ。

「あー、気が済んだ」

ヤマタロは、今まで見たことがないくらい綺麗で、だけど男らしい顔をしていて。

私はそんなヤマタロから目が離せなかった。

「……苦しかった?」

「うん。とっても!」

私が眉間にしわを寄せてわざと怒ったふうに言うと、ヤマタロは笑って、私の前髪を掻き上げた。

そして、額に軽く触れるだけのキス。


「……やっぱり、もうちょっとだけ」

もう一度ヤマタロに抱き寄せられる。


今度は、優しい、柔らかいハグ。


周りから、女の子の黄色い声が聞こえてきた。

お昼の時間を過ぎたと言っても、お店にはまだたくさんのお客さんがいる。

それに、ここがいくら奥の席だと言っても、こんなことをして目立たないわけがない。


「……ねぇ、みんな見てるよ?」

「恥ずかしかったら、顔隠しとけば?」

そう言って、ヤマタロは私の頭を自分の胸に押し当てた。

私はされるがままにヤマタロの胸に顔を埋めた。


なんでだろう?

今、初めて抱きしめられているはずなのに、私の体はヤマタロの体にしっくりと包み込まれていた。

それはまるで、ずっと前から私のために用意されていた居場所のような、懐かしい感覚さえして。


私は、幸せで胸がいっぱいで、そのまま意識を失いそうになった。

< 304 / 308 >

この作品をシェア

pagetop