君を探して
相変わらずぼやけたままの姿の“オレ”は、こちらを見て、確かに一度笑ったかと思うと、そのままヤマタロと重なった。

そして、静かに、消えてしまった。



「どうした?」

“オレ”と重なったヤマタロが、不思議そうな顔をして聞いてくる。

「消えちゃった……」

「何が?」




「……ううん、なんでもない!」



昨日の陽人の言葉を思い出す。

『ヤマタロの中に“オレ”がいる』




うん。

そうだね……。


だから、サヨナラ。

私の大事な、大好きな、“オレ”様。



今まで、ありがとう。


そして、これからも、よろしくね。




「ねえ、今からどこに行く?」

「一緒にいられれば、どこでもいーだろ?」

そう言って、ヤマタロが私に優しく手をさしのべた。



「ほら、行くぞ」





「うん!」


私は、その手をぎゅっと強く握りしめた。







<fin>

< 307 / 308 >

この作品をシェア

pagetop