君を探して
「だからね、私のメールの相手も、素の自分を隠す理由があるってことなのかな、って思うんだ」

素の自分ではどうにもできない……
そんな東雲の言葉がずっと気になっていた。

「ふぅーん。たとえば、相手は女とか?」

ヤマタロは、自分のお弁当のシイタケを箸でつまんで、私のご飯の上にのせた。
ヤマタロは嫌いなものがあるとすぐにこうする。

「女の子か……それは考えてなかったなぁ。あ、私もシイタケ嫌い」

そういってシイタケをヤマタロに返す。

ヤマタロは小声で「ゲッ」って。
全く、大人気ないんだから。


「あとは……そうだな、先生とか?」

しぶしぶシイタケを口に運びながら、ヤマタロが言った。

……先生?

「そうだ、滝田なんてどう?」

「えっ!?」

「そうだよー、お前、滝田と仲いいじゃん。部活で付き合いもあるし、ほら、教師と生徒の恋愛って、なんかありそうじゃん」

「バカ! 滝田先生とはそんなんじゃないもん」


そうは言ってみたものの、確かに気になることはある。

たとえば、今朝の抜き打ち検査。

滝田先生なら確かに前日にその情報を知ることができたはずだ。

そして、担任でもあり、部活の顧問でもあるという立場を隠さなければいけないという理由も。

「あ、その顔は心当たりあるのか~?」

ヤマタロが冷やかし半分で言う。

「イヤだな、そんなことあるわけないじゃん!」

私はあわてて、一度つかんだウインナーを落としてしまった。

「動揺してるし」


……ヤマタロの意地悪。

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