君を探して
「そうだっ! メールといえば、ヤマタロってメールくれないよね!」

私は必死に話題を変えようとした。

ヤマタロはそんな私のことをお見通しの様子だったけど、だからといってこれ以上私をいじめても楽しくないようで、あえてこの話にのってきてくれた。

「だって、面倒くさいじゃん、メールって」

うん、ヤマタロらしい答えだわ。
ヤマタロってとにかくめんどくさがりなんだよね。


確かに、ヤマタロからメールをもらったことはほとんどない。

こっちから用事があってメールをしても<了解>とか<OK>なんていう簡単な返事が返ってくるか、ひどいときなんて電話をかけてきて「メール見た」なんて言ってくることもあって。

「携帯の小さなボタンをプチプチ押すって、どうも俺の性に合わないんだって。電話で話すのはいいんだけどなー」

結構こういう人っているんだよね。

むしろマメにメールをくれる男の人のほうが珍しいのかも。

「でも、彼女ができたらどうするの?」

「電話だよ、電話! メールなんてめんどくせー」

ヤマタロが特定の彼女をつくらないのには、こういう理由もあるんじゃないかと思ってしまう。

相手に合わせて努力することも必要なんだよ! と言いかけたが、今の私では全然説得力がないことに気づいて、私はその言葉をお弁当と一緒に飲み込んだ。

< 36 / 308 >

この作品をシェア

pagetop