君を探して
私は無言でうなずいた。

投げやりな感じもする慎を目の前にして、拒否するなんてできない雰囲気だった。

「じゃあ、放課後あけといて? ……先生、明日は俺達、部活休みますから」

慎はそれだけ言うと、音を立てながら早足で部室を出て、荒々しくそのドアを閉めた。


あぁ……。
明日、終わるんだ……。


あまりの展開に思考回路が追いつけなかっただけなのかもしれないけれど、不思議なことに、私は穏やかな気持ちだった。

ドキドキすることも、悲しいこともない。

自分でもびっくりするくらい淡々としていた。


「先生、いろいろごめんね」

私がそう言うと、滝田先生は力なく笑った。

「こっちこそ、何もしてやれなくて悪いな」

私は黙って首を横に振った。


……そんなことないよ。

先生くらいのほうが、こっちも楽だ。

あれこれ気を使われたり、陽人のように暴走されるほうが辛い。



先生は「戸締り頼むな」といって、部室を出て行った。
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