君を探して
「こんばんはー」

勝手知ったる陽人の家。

ドアを開けると陽人のお母さんが笑顔で迎えてくれた。

「深月ちゃん、話聞いたわよー」

どうやら担任でもある滝田先生から電話が入ったらしい。

慎は口を切って血が出ていたし、陽人が暴力を振るったことは紛れもない事実だから、仕方ないか……。


でも、陽人のお母さんはいつもと変わらない。

「バカ息子がごめんね」

なんて、私にあやまってくれる。

ううん、と首を横に振りながら、私は気になっていたことを聞いた。

「陽人、停学とか……処分されたりするのかな?」

「それがね、相手──慎君のほうから、穏便に済ませたいって言ってきたんだって。ただのケンカだから騒がないで欲しいって……」

「……え?」

そんなふうには見えなかったけど。

「相手のおうちにお詫びの電話を入れたんだけどね、ご両親は慎君から何も聞いてなかったらしくて、喧嘩両成敗でいいでしょうって」

「……」

ホッとした。


でも、慎はどうしてそんなこと言ったの?

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